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2019/02/22

雑木林の伊那紬



春先のぬるい1日。
こんな時期に着たくなる伊那紬。



信州の山に生えている自然の木々で染められたもの。
好きすぎて逆に着る機会が間遠になりがちですけど、久しぶりに袖を通したら、ああやっぱり好きだ。
一度洗い張りしたことに関係あるのか、以前よりも色柄がくっきりした気がします。
それとも光の加減なのか。
今日、晴れた陽の光の中で見て「あ?こんな色だったのね」と思いました。
久しぶりなので忘れてたのかなあ。
でもまあ好きには変わりないのダ。
私が死んだ時はコレを着せて送ってほしい。
こんな何の変哲もない着物へのこんなに深い愛は他人にはなかなか理解されないと思うので、いっそのこと一緒に燃やしてもらいたい。
誰に言っておけばいいかな。

帯は絞りの生紬。
これも、かなり好きなもの。
ぼんやりした色なんだけど。
藤で染めた帯揚げ、どこかで買った安い帯締め。
どこにも強い挿し色のない組み合わせ。
すべてがぼやけて、春の空気に霞む雑木林のようです。

まさに今日はそんな雑木林を抜けて、いつもはあまり行かない方角へドライブしてきました。
春霞みの正体はスギ花粉なのかもしれませんが、山肌の木々の枝先がほんのり色付きはじめて、風景全体に優しさがありました。

徹底的に田舎道だけを走って、あまり馴染みのない町へ行き、現代の匠が作る雛人形を見てきたのです。
茨城県内陸部の山間にある城里町桂村、このあたりには、かつて水戸藩ご用達の様々な工芸職人たちが住んでいたそうですが、その中には雛人形を作る職人もいました。
今はそんな職人村的な様相はほとんど残っていませんが、雛人形を作りを続けて三代目になる職人さんがかろうじてお店と工房を構えています。
三代目は新しい感性で伝統的な有職雛でありながらも現代人の生活スタイルに合う人形を提案し、それは桂村の地名にちなんで「桂雛」と呼ばれており、さらには職人同士のネットワークを生かして県内の様々な伝統工芸品とコラボレーションしたこだわりの雛人形も発表しているというので、一度見ておきたかったのでした。
たとえば十二単と束帯を「結城紬」で作ってあったり、衣装に張りを持たせるための芯に「西の内和紙」が使われていたり、内裏雛が「大子の漆」を塗った飾り台に載っていたり。
いずれも茨城県に古くからある、たぶん今は継承者が減少して絶滅が危惧される伝統品ばかりです。



残念ながら職人さんご本人には会えませんでしたが、若々しいセンスと確かな技術で作られた桂雛はとても美しく、清々しく、久しぶりに「きちんとしたもの」を見たという感じがしました。

雛祭りのイベントシーズン。
もっといろいろなお雛様を見に行きたいのに、なかなか時間がとれません。
早めに仕事を片づけて、週明けあたりから雛めぐりに出かけたいです。


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コメント

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No title

昔、着付け教室に通っていた時、おとなしい淡い青と灰色の、ぱっとしない色に見える紬を着てきた人がいました。
着つけた後で花見に行く日で、その人の紬が日光を浴びた途端、縦糸の紅や黄色が生き生きとして別の紬のように見え、驚いたことがあります。
何という紬なのか尋ねたら、すべて天然染料で染めた紅花紬でした。

No title

> 羽衣 牡丹さん
そうですよね紅花紬。決して赤は前面に出てないのに奥底に艶があるというのか。織物の面白さでもありますね。その着物を選んだ人の内面の強さとかこだわりとか、秘めた色気も感じます。日の下でそれを発見して感動できる牡丹さんも織物の楽しさを知っている人です。